初デートは這ってでも
「タナカさん、顔色悪いけど大丈夫ですか?」
「体調悪そうですね…」
なんて会社で言われて。
そーなのよ。風邪が悪化してしまって。
無理しないでって言われても。
そーもいかないのよ。
今日はデートなのだから。
あー失敗したなー。
今日くらいには体調が良くなるように期待してたのに。
なんか予定の変更ってお願いしづらくて。
バカだよねぇ。
以前飲み会で知り合った人とごはんを食べに、今日は普段いかないような都心部へ。
早く着いちゃって、時間をつぶすためにブラブラ。
しんどいからとにかく座りたい…。
ビジネス街のそばって、スーツじゃない人でもカッチリ、みんな洗練されてて、ちょっと自分が恥ずかしくなる。
初デートって普通はウキウキするものなのかもしれないけど、私は全然。
恋愛負け組の人間にとっては、今までの経験から来る悲しい予感と、これが最後であって欲しい、うまく行って欲しいっていう祈りみたいなものが混ざった、あんまり気持ち良くないものなんです。
喫茶店で時間をつぶしてたら、待ち合わせまで後30分─。
狭いトイレの鏡で自分の顔を覗いてみる。
髪は─まぁいつも通り。
ほっぺたにできた吹き出物、完全には治らなかったなー。嫌だなぁ。あんまり左顔見せたくないな。
鼻をしっかりかみ、ロキソニンを飲む。
香水をちょっとだけ付けた。
そろそろ待ち合わせ場所の近くに行こうかな、と思った頃、向こうからラインが来た。
「少し早く着いたから、近くの●●ビルに入ってます」
急ごう。自分もちゃんと早く来てるってアピールしたい。
うまくいくかは別として、今日を楽しめますように─